2023年度決算についての反対討論
私は、日本共産党市議団を代表して、2023年度一般会計及び特別会計並びに企業会計諸議案のうち、議案第133号ないし136号、140号、142号、143号、145号ないし152号、154号について反対し、討論を行います。
2023年度は新型コロナウイルス感染症が5類に変更され、行動制限が解除されましたが、市内中小企業・小規模企業者の4割はコロナ前水準まで売り上げが回復せず、コロナ関連施策の縮小・廃止によって医療・介護施設への負担が増大するなど、依然としてコロナの影響は大きく残っていました。それに加えて「失われた30年」ともいわれる長期にわたる経済停滞のもとに襲いかかった物価高騰が、市民の暮らしや市内中小業者の営業に深刻な影響を及ぼしました。この暮らしと経済の危機に対して、経済政策の抜本的転換こそ求められていましたが、岸田自公政権は経済の停滞をもたらした従来の政策をまったく反省せず、国民多数が求める消費税減税にも背を向けました。他方で敵基地攻撃能力の保有と大軍拡を進める「安全保障3文書」を閣議決定し、5年間で43兆円もの軍事費という大軍拡の道に踏み出しました。そして、健康保険証の廃止とマイナンバーカードの強制や小規模企業者やフリーランスへの実質的な増税となるインボイス制度の強行など、あらゆる分野で国民の声を聞かない「問答無用」の政治を進めました。
このような国の政治に対して、福岡市政に求められたことは、市民の声にもっと真摯に耳を傾け、住民の暮らしと福祉を良くするという自治体本来の仕事を進めること、国が進める悪政に対しては憲法の精神を生かして住民を守る「防波堤」の役割を果たすこと、そして地方自治と民主主義を守り、発展させることでした。
しかし2023年度決算をみると、髙島市長は「都市の成長」を「生活の質の向上」に結び付けるという名目で、大型開発や巨大イベントを推進する一方、市民の切実な願いである学校給食費無償化や子ども医療費の完全無料化、高すぎる国保・介護保険料の引き下げなどには全く手を付けず、大企業の儲け最優先で市民の暮らしを顧みない市政を続けてきたことが浮き彫りになりました。また、物価高騰のもとで苦境に立たされている事業者への支援も不十分であり、事業継続と雇用維持が困難になり、廃業に追い込まれる事業者をひろげることになりました。さらには、老人福祉センターの入浴事業を利用者から一切意見を聞くこともなく廃止を強行するなど、市民の願いとは真逆の施策を進めてきました。
これらの問題について、分野ごとに詳しくみていきます。
第一に、大型開発と規制緩和、イベント行政の問題です。
昨年夏に開催された世界水泳福岡大会は、市の負担が3倍に膨れ上がり、市民1人当たり約6500円の負担となりました。「電通」やテレビ朝日、大林組といった大企業に合計で120億円以上が支払われた一方、市民には何の恩恵もありませんでした。髙島市長は「成功した」と言い張りますが、市の言う430億円という経済波及効果もごまかしで、実際には300億円程度であり、それどころか世界水泳で使用したマリンメッセの利用者数が年間50万人以上減ったことによる経済的損失を何ら考慮していないことが明らかになるなど、まさに虚構だらけであり、「成功」どころか大失敗であったことは明白です。
規制緩和によって大量のビルを建て替え、渋滞、避難スペース不足、地価上昇による住民・中小業者追い出しをまねく「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」に、決算年度は合わせて約24億円の税金が投入され、今後天神通線の道路整備には60億円使うことが計画されています。市は「天神ビッグバン」によって「安全・安心、災害に強い街づくり」を進めると言っておりますが、市独自の耐震基準をクリアしている天神エリアのビルは4割にとどまり、地震などの災害時に帰宅困難者を受け入れる民間ビルが少ないために、災害時に1万7000人以上が路頭に迷う可能性があることが明らかになっています。また、市民の憩いの場である水鏡天満宮横丁の移転計画など、市内の若者や庶民が集う場所を次々と無くしているのが「天神ビッグバン」であり、まさに問題だらけの「街壊しプロジェクト」であると言わざるを得ません。
市長はこのような大型開発や巨大イベントを推し進め、今後さらに九大箱崎キャンパス跡地の開発や拠点間交通ネットワークなど新たな大型開発も計画しています。「選択と集中」と言いながら、社会保障の充実や公共施設の建て替えなど必要な施策を削り、このような大企業の儲け最優先の施策ばかりに税金をつぎ込むことは許されないことです。
第二に、医療・介護などの社会保障についてです。
7区7ヶ所あった保健所を市民に一切知らせないまま中央区の「あいれふ」に統廃合する案が昨年12月議会に突然提案され、今年7月から強行されました。保健所の統廃合によって地域保健機能の弱体化を招く恐れがあり、これまで各区保健所で行われていた精神保健福祉や難病などの業務が一本化されることでサービスは後退し、感染症などの危機管理能力の低下が懸念されます。実際に今夏のコロナ第11波の際には各区の感染者数が発表されなくなったという問題が起きています。さらには、新しい保健所が「あいれふ」に作られることで研修室・和室・講堂が減らされ、利用していた市民団体などが事実上締め出されるという問題も起こっています。この統廃合の狙いは合理化と人員・経費削減に他ならず、今年度は人員が増員されましたが、今後も維持されるという保証はまったくありません。
異常な物価高騰で暮らしの困難が増大しているなか、家計の負担を減らすために、国民健康保険料や介護保険料の負担を軽減するあらゆる手立てを取ることが求められていました。しかし、国民健康保険料について、決算年度も引き続き高い水準の保険料を被保険者に押し付け、介護保険料についても決算年度は制度開始時から2倍以上という史上最高額に値上げされたままの水準で維持され、今年度はさらなる引き上げが行われました。わが党は負担軽減のために財政調整基金を取り崩すなどして、引き下げを図るべきだと求めてきましたが、市は全く応じませんでした。物価高騰の影響は低所得者層にとりわけ大きな打撃となっており、全国的に生活保護の利用者が増えています。しかし、市が広報・啓発を怠り、水際作戦を続けるなかで、生活保護が必要な人が申請すらできない例が増えており、決算年度では、本市の生活保護率は全国と比べて逆に下がってしまいました。また、自公政権が社会保障費抑制路線のもとで2度にわたって生活保護費を削減し、生存権さえ否定されるような事態が常態化しています。わが党は決算審議のなかで、生活保護の広報・啓発を徹底し、夏季の見舞金制度や下水道使用料の減免制度を復活・拡充させるべきだと求めましたが、髙島市長は「適切な運用をはかっている」などと言い張り、冷たく拒否しました。
第三に、教育・子どもについてです。
髙島市政のもとで開発行政が野放図に進められ、人口が無計画に膨張した結果、各地で過大規模校が続出し、子どもたちの学び成長する権利が侵害されています。決算年度も小学校で23校、中学校で6校が過大規模校となりましたが、市長も教育長もマンション開発規制などの有効な手立てをまったく取りませんでした。
コロナ禍を通じて35人以下学級が実施されたものの、学校運営に必要な担任以外の教員が減らされているため、それに起因する教員の長時間労働が深刻です。その結果、クラス担任が年度当初から不足し他の教員が代替で必死にカバーする事態が発生し、また、正規教員で満たすべき教員定数の枠を非正規である講師で埋めるやり方が横行するなど、現場の疲弊は極限に達しています。それにも関わらず、決算年度では教員の抜本増や長時間労働解消といった有効な手立てを全く取ろうとしませんでした。また、本市では専門職であるスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、学校司書など極めて重要な役割を担っている専門職が1人で複数校を掛け持ちしており、その処遇は会計年度任用職員で、報酬も賃金も極めて低い水準にとどめられています。わが党は専門職にふさわしい処遇改善をはかり、全校へ1人以上配置することを求めてきましたが、市はこれにも背を向けました。
わが党は市民団体のみなさんとともに毎年学校の施設調査をおこない、市に要望を提出していますが、どこの学校も修繕や対応が必要な箇所が多く見受けられ、危険なアスベスト含有建材が放置されている実態もあります。多くの学校校舎が築50年を超え老朽化している中、抜本的に教育予算を増やすことが必要であり、わが党はこのことを繰り返し求めてきましたが、市は全く応じませんでした。
保育士の賃金は、全産業平均より月5万円低いと言われており、現場の保育士からも賃上げを求める強い要望が毎年寄せられていますが、まともな賃金アップは図られていません。わが党は市独自の賃上げを求めてきましたが、市は全く手立てを取ることはありませんでした。また、保育園での子どもの虐待や不適切保育を根絶するためにも、通報の奨励とあわせて保育士の負担軽減のために配置基準の改善が求められています。今年度から行われた国の基準変更は不十分であり、わが党は決算審議でさらなる改善を市独自に図ることを求めましたが、国に要望すると述べるにとどまりました。
わが党はこの間、市民の要望の強い学校給食費の無償化、少人数学級のさらなる推進、「自閉症・情緒障がい特別支援学級」の全校設置、子ども医療費の完全無料化、児童館の増設なども求めてきましたが、決算年度では全く取り組まれることはありませんでした。
第四に、中小企業施策、経済・雇用対策についてです。
中小企業・小規模企業者は、市内事業所の約99%を占め、市民の雇用や暮らしを支えるとともに、地域社会においても、コミュニティの活性化、防災や災害時の対応などに重要な役割を果たしており、ここが元気にならないと福岡市の経済は活発になりません。それにも関わらず、本市の決算年度における中小企業振興のための事業費はあまりにも少なく、施策が貧弱です。その一方、雇用や税収などの成果がどれだけ増えたか具体的にはわからないままに進めているスタートアップには決算年度も4億円以上つぎこんでいます。わが党は決算審議のなかで、コロナの影響と物価高騰に苦しむ中小企業・小規模企業者をしっかりと支援するとともに、公契約条例や総合評価方式の改善で労働者がまともに生活できる賃金、人間らしく働ける労働条件を保障するよう求めましたが、市長は応じませんでした。また、わが党は温室効果ガスの削減と地場業者の仕事おこしにつながる断熱改修促進の市独自施策や学校教室・公共施設の断熱化に今すぐ取り組むことや、住宅リフォーム助成制度の実現などを求めてきましたが、全く取り組む姿勢を見せませんでした。
第五に、環境とまちづくりについてです。
1月の能登半島地震を受けて、市の防災対策を抜本的に見直すことが求められました。しかし、市は防災アプリの機能拡充を災害対策の目玉として位置づけただけであり、避難想定の見直しも防災備蓄の拡充も、災害時の避難所である体育館のエアコン設置も、何も打ち出しませんでした。まさに災害対策を市民の自助・共助にゆだね、公助を軽んじるものであり、全くの責任放棄です。
命がおびやかされる酷暑、豪雨や巨大台風による甚大な災害が起こるなど、気候危機対策はもはや一刻の猶予もないほど求められており、市は2030年度に温室効果ガス排出量を50%削減する目標を掲げています。しかし、その計画の中身は2030年までには実現が困難な新技術を前提としたもので、しかも排出量の多くを占める民間事業所の努力をあてにしています。わが党は、新技術に頼る現計画を抜本的に見直し、行政が責任を持つ仕組みにすべきだと求めてきましたが、市は新技術に固執し、計画見直しには背を向けたままです。また、熱中症から命を守るために生活保護利用世帯や低所得世帯への電気代支援やエアコン未設置の世帯への購入・設置費の助成が求められていましたが、これについても全く手をつけませんでした。
西鉄バスが市内各地で減便や路線廃止をおこない、市民の足に大きな影響が出ています。わが党は生活交通支援として、いまこそ市独自のコミュニティバスを走らせることを決算審議のなかで求めましたが、市長は冷たく拒否しました。それどころか審議のなかで、「都市交通基本計画」の改定に向けて博多駅と人工島を結ぶロープウェイのようなものなどを試算していることが明らかとなり、市民のためではなく観光客などの利便性向上と民間大企業の利益を最優先にした都心部の交通整備ばかりを推し進めていることが明白となりました。
第六に、市政運営のあり方についてです。
自衛隊は近年、米軍の指揮の下で敵基地攻撃能力を保有する組織へと変質させられ、自衛隊員が「殺し殺される」関係に投げ込まれる危険が高まっていますが、その自衛隊に本市は毎年18歳と22歳の若者の個人情報を提供しています。わが党は決算審議のなかで、県内過半数の自治体が提供していない実態や太宰府市が提供を取りやめたことなどを示し、名簿提供の中止を求めましたが、市長は全く悪びれることもなく「適切だ」と答弁しました。審議で取り上げた、自衛隊による公共施設でのルールを無視したリクルート活動や公園の指定管理者が自衛隊をアピールするイベントを主催している問題なども含め、自衛隊に対する特別扱いを続けるのは言語道断であり、わが党は断じて認めるわけにはまいりません。
市は2015年以降、市民団体が開く「平和のための戦争展」の名義後援を拒否し続けてきました。2023年度は当初、「戦争展」の名義後援については承諾していましたが、終了後に「特定の主義主張に立脚した内容が含まれ、行政の中立性を損なう」という理由で承諾を取り消しました。「行政の中立性」をことさら強調し、市は展示された作品のなかに「特定の政治的立場」だと判断するものが一つでも含まれていれば後援を取り消すという態度をとることによって、市民の自由な議論を抑圧しており、許されません。
市役所で働く職員の約3割は非正規の市職員である会計年度任用職員であり、その約8割が女性です。いくら専門知識を持っていても、どんなに住民に信頼されていても、正規職員と比べると低賃金です。わが党は、ジェンダー平等を実現するうえでも、処遇改善をはかり、市職員の男女の賃金格差をなくすよう求めてきましたが、市長は決算年度においても本気で取り組む姿勢を全くみせませんでした。
トラブルが次々と発覚し、国民の多くが不安を感じているマイナンバーカードの取得を本市は国と一体になって強力に推し進めています。本市ではマイナポイントのバラマキなどに決算年度では5億円以上、これまで約30億円の税金をつぎ込んできましたが、市民への交付率は約7割にとどまっており、マイナ保険証の利用も、直近では市の国保加入者でわずか14%にとどまっています。今年12月2日からの紙の保険証新規発行終了も含め、本来任意であるはずのマイナンバーカード取得の強制につながるこのような動きは許されません。
以上、2023年度決算の問題点を見てきましたが、住民の福祉の増進を図るという自治体の責務を放棄し、大企業の儲けを優先し、市民に犠牲を押し付け、その苦しみに背を向けるものであり、到底認定できる中身ではありません。しかも今年度策定される予定の第10次基本計画及び「政策推進プラン」「財政運営プラン」「行政運営プラン」の素案をみると、これまでと同じく「生活の質の向上と都市の成長の好循環」という破綻した都市計画にしがみつき、市民サービスを縮小し、地場中小企業・小規模企業者には自己責任を押し付けるというとんでもない市政を継続しようとしていることは明白であり、言語道断です。いまこそ大企業の儲けばかりを応援する政策を転換し、市民の暮らしと中小企業・小規模企業者応援で地域にお金を回す循環型の経済に転換することこそ求められております。
以上を述べて、わが党の反対討論を終わります。